ニュースレターのメリット・デメリット

ニュースレターのメリットとデメリットについて、ニュースレター配信サービス theLetter を運営する身からご説明していきます。
itaru hamamoto (至) 2021.08.23
誰でも

私のニュースレター Essays by Itaru では、メディアの変遷やニュースレター全般のこと、事業づくりのこと、情報のアウトプットやインプットに関することをエッセイとして取り上げます。本業が事業家だということもあり更新は不定期ですが無料ですのでぜひご登録ください📨

さて、今回のニュースレターは「ニュースレターのメリット・デメリット」について書いてみたいと思います。2021 年 8 月時点では、私が運営している theLetter が「ニュースレター」というクエリで Google 検索すると 1 位に出るようになったのですが(👏)、ニュースレターのメリットやデメリットに関するまとまった記事が日本ではなかったのです。知りたい方も多いんじゃないかな〜という予想のもとこのテーマをサクサク書いてみたいと思います。

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ニュースレターのメリット😎

メリットやデメリットを決めるといのはなかなか難しいのですが(ある人にとってメリットというのは、他のある人にとってはデメリットとなりうる)、theLetter に限らずニュースレターについて一般的に言われていることを整理し、個人的に思う部分も混ぜて下記に整理していきます。

  • 誰もが持つ:メールは誰もがアクセスでき、定期的にチェックされる
    まず、大きなメリットはこれです。これだけスマホアプリや Web サイトが溢れる時代に「誰もが見る」というスペースは非常に稀有ではないでしょうか。日本だと LINE や通話アプリくらいのものです。ニュースレターは流行りのアプリがインストールされていなくとも、メールアドレスを打ち込むだけで誰でも受け取ることができます。そして、メールは定期的にチェックする方が多いと思われます。

  • 届く:ニュースレターはプッシュ型である
    ニュースレターはコンテンツを読み手に届けることができます。読み手は特定の場所にコンテンツを読みに行く手間が省けます。書き手は、プッシュ型であることを活かし、毎週 or 毎日の特定の時間に届けるというブランディングをすることもできます。
    私的な場所に届くという体験は、SNS のタイムラインを流れる記事をクリックして読む、という体験とは全く異なります。
    ニュースレターの 1 記事目を気に入ってくれた人の過半数は、2 記事目も配信後すぐに読んでくれるでしょう。この数値感は Web メディアを経験したことのある身からすると驚異的なリテンション率だと思います。

  • 掘り起こしやすい:ニュースレターは読み手のものになる
    ニュースレターはメールなので、読み手のメールアプリにデータとして保存されます。SNS で前に見たコンテンツを掘り起こすのは至難の技ですが、メールは非常に掘り起こしやすいです。そのため、長文コンテンツが配信されてきても、小分けに読むことができますし、届いた瞬間(コンテンツの存在に気づいた瞬間)に読まなくても、あとで落ち着いた時間に読むことができます。

  • 直接的なつながり:ニュースレターはパーソナルなもの
    SNS やブログに投稿されたコンテンツは前提として、「たまたま見つけてくれた人」に読まれるものです。ニュースレターは明確に「登録読者に届くもの」なので、強く読者を意識することになります。その分内容は親密なものになりやすく、また読み手としてもタイムラインの喧騒の中でコンテンツと出会うのではなく、私的なメールボックスで受け取るという体験となるため、消費体験が全く異なります。
    この違いは数値にも現れやすく、ニュースレターは Web 記事と比べ、広告単価が高い、外部リンクのクリック率 / コンバージョン率が高い、課金率が高い、などと英語圏ではいわれています。
    ちなみに theLetter は返信機能があるため、読者が書き手に対して、ニュースレターへの私的な感想をダイレクトに送ることもできます。面白いことに、theLetter 上のニュースレターへの読者からの返信は、1,000 字を超えるような長文であることがほとんどだったりします。

  • セグメント分け:メールアドレスとデータを紐付け、ターゲティングできる
    SNS やブログと違い、ニュースレターは「読者リスト」がたまります。そして読者リストと開封率やクリック率などのデータを紐付けられれば、送るニュースレターを人によって切り分けることができます。
    これはマーケティングの観点からすると非常に強力です。読者リストの多いメディアは、例えば広告クリエイティブの A/B テストを、読者セグメントをつくることで簡単に実施できます。
    直接課金のモデルにおいても、無料読者セグメントを蓄積できることは、営業で言うところの「リード獲得」に他なりません。

  • サービス依存性の低さ:特定のプラットフォームに依存しない
    1 つ目の「誰もが持つ」と関連し、ニュースレターのサービス依存性の低さは注目に値します。例えば、多くのアプリは直接課金モデルを取ろうとすると、Apple などに手数料を支払う必要があります(アプリ内決済は 30%😅)。ニュースレターは特定の OS やアプリに依存することはありません。
    また、特定のサービスに依存した発信となると、「Facebook はやっていないけど、Instagram は使っている」「Twitter はアカウントを持っているけどほぼ見ていない」のように、それぞれのサービス利用者の都合や利用時間に依存しやすいため、コンテンツを届けるために注力すべきプラットフォームを選ぶ必要があります。しかし、ニュースレターはそのようなプラットフォームと複数併用しながらメールアドレスという名の読者リストを独立した場所で収集できます。

  • 低コスト:マルチデバイスでの発信がすぐにできる
    メールは PC でもスマホアプリでも確認することができます。コンテンツを届けるための自社アプリを開発すると、こういったマルチデバイス対応を行う必要がありますが、ニュースレターはそもそもがマルチデバイス対応です。
    送信数に応じて従量課金されるメール配信スタンドも多いですが、多くの場合ほとんど無料で配信を始めることができます。

  • 対象は読者:相手が明確なのでコンテンツクオリティを意識しやすい
    これは 4 の「直接的なつながり」と関連する利点です。ニュースレターはプライベートなメールボックスにコンテンツを届けるものなので、書き手にとっては慎重にならざるを得ません。Web という広い海に記事を投げ込むブログの執筆体験とは異なり、送り先がいる前提で執筆をするため、コンテンツの質をより意識しやすいフォーマットかもしれません。
    それは読み手にとって非常に利益のあることです。

  • 選べる:読みたいものだけ読む
    SNS のタイムラインが世の中に定着して 10 年以上経ち、我々は自分が何のコンテンツを受け取るのか?について長らくアルゴリズム任せにしてきました。中には疲弊された方もいるかもしれませんが、ニュースレターは人為的に選択したコンテンツを受け取ることができます。
    私は英語で書かれたニュースレターを山のように購読していますが、自分でオリジナルの新聞を作って読んでいるような感覚になっています。政治欄はこのメディア、経済面はこの人、料理はこの人、ビジネスは、、、というような感じです。

他にもメリットを並べることはできますが、上記 9 つの副次的なメリットが多いのでこれくらいに。次はデメリットです。

ニュースレターのデメリット😇

ニュースレター配信サービスを運営している身としては、デメリットをリストすることはあまり楽しいことではありません。しかし、ニュースレターに興味がある方こそ、デメリットは抑えておくべきだと考えています。

  • メールのチェックは煩わしい
    そもそも、人々が個別のアプリやチャットなどに滞在時間を移し始めたのは、メールが煩わしいものだったからでしょう。
    フィッシングなどの迷惑メールや、いらない宣伝メールが大量に届きます。メールを送るという行為も、チャットに比べて気軽ではないです。
    そういった意味では、メールで届くという形式は、人々にとって避けるべきことなのかもしれません。とくに若い世代では浸透していない形式でしょう。
    コンテンツの質が高いニュースレターが増えることで、この問題を解消できれば良いのですが...。

  • 取得データが限られる
    ニュースレターは開封率などのデータを取得することができますが、Web 上のコンテンツと比べ、取得できるデータは非常に限られています。
    読了率、滞在時間など、コンテンツの質的な評価は、開封率と外部リンクへのクリック率などからヒントを得るしかありません。
    また、Apple の発表によれば、プライバシー保護の観点から、開封率までも取得できないようになる可能性があります。

  • 拡散されにくい
    ニュースレターは Web 上の記事とは違い、拡散性が低い形式かもしれません。例えば Facebook 上で読んだコンテンツは、気に入った時に Facebook 上でワンボタンでシェアできます。
    ニュースレターは、シェア導線があったとしても一度 Web サイトに訪れる必要があることがほとんどです。

  • メール受信はアンコントローラブル
    配信者にとって、読み手の受信設定や利用しているメーラーの仕様などについてはコントロールが効きません。
    Gmail のプロモーションタブに分類される可能性もあるし、迷惑メールボックスに入ることもあります。
    キャリアメールの迷惑メールフィルタ設定が強いと、これまでメールを受け取ったことのないアドレスは全て拒否される可能性もあります。
    そして多くのメールユーザーは、こういった設定についてのリテラシーが高いわけではありません。登録したのに届かない(見つけられない)、という事態はよく起こることです。
    ニュースレターの配信者は、こういった事態に対処する術がほとんどありません。

  • 動画・音声が再生できない
    ニュースレター上で動画や音声を再生することはできません。
    もちろん、外部リンクを配置して飛び先で再生してもらうことはできますが、メールアプリと Web ブラウザを行き来してもらう必要があります。
    英語圏では、少しでもニュースレターをリッチに見せるために、GIF を取り入れているニュースレターメディアも多いです。

  • デザインが限られる
    最近のニュースレターは HTML メールであることが多いですが、実はメーラーによって使える装飾(CSS プロパティ)は異なります。
    どのメーラーでもキレイに表示されるデザインをしようとすると、限られたデザインとなります。例えば角丸をつけるプロパティが効かなかったり。

  • リアルタイム性に弱い
    ニュースレターは配信してから開封率が落ち着くまで、数日かかるケースが多いです。即座に周知する手段としては若干弱いかもしれません。
    時事性の強いコンテンツを送る場合は、毎朝 xx 時にフレッシュなニュースをお届けします、というようなコミュニケーションが必要かもしれません。

  • 編集が不可能
    ニュースレターは一度読み手に届くと、メールボックスに入ってしまうため、修正することができません。
    重大な誤りがある場合は、2 通目の修正版ニュースレターを送るしかありません。
    そして、編集が不可能という理由と同じく、読者コメントなどリアルタイムで反映されていくものをニュースレターに反映することもできません。

デメリットはこのあたりでしょうか。並べだすとメリットと同じくらいありましたね。笑

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ニュースレターは体感するしかない

私もこれまで、チーム・書き手・読み手・投資家、ニュースレターの良さをできる限り言語化するものの、日本でニュースレターがまだ流行していない今、魅力を伝えるのに苦労することが多くありました。

しかし、英語圏のメディアから何かしら情報を得ている方は、その情報ソースのうち、無視できない割合をニュースレターが占めるはずです(それほど英語圏だと流行っている)。そうした人と話すと、ニュースレターいいよねってすぐに納得してもらえるケースが非常に多いのです。やはり説明するより体感してもらう方が何倍も説得力がありますね😇

ニュースレターの良さをたくさんの人に体感してもらうには、良いニュースレターで溢れる状態をつくらなければならない。そのためには、多くの方が良いニュースレターをつくれるツールと環境をつくらなければならない。ここに対して theLetter 頑張っていきます!

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私は事業づくりのスキルを日々磨くべき立場にあるのですが、日々プロの書き手さんと話すので、少しでも気持ちを理解しながら関わりたいなと思い、自分自身も寄稿の経験を積みたいなと思って何件かやってきました。最近ですと、編集者で有名な宇野常寛さんが主催する PALNETS さんに寄稿しました。1 万字超えで力を込めて書きました。※一部有料記事です

他だと、スタートアップ界隈で有名な BRIDGE さんや、メディア界隈の専門メディアである Media Innovation さんなど。

Media Innovation さんでは、「パブリッシャーには今がチャンス」theLetter 濱本氏が語るニュースレターのこれから、というイベント記事でも紹介してもらえました。

theLetter の成長に合わせて、必要なメディア露出はどんどん今後も行いたいなと考えています。

日々の仕事とは別に、試してみたいこともいくつかアイデアがあるので、また近日発表したいなと思います👋

あと、最近 theLetter は大規模アップデートを行いました(その影響で何名かの書き手さんにはご迷惑おかけしました🙇🏼)。裏側のデータベース設計を見直したり、フロントエンドを導入したり。今年のオープン化に向けて頑張ってすすめていきます。

よかったら SNS でシェアしていただければ、ご意見拝読したいと思います。

それでは!

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