インターネットマネタイズ手法研究 1:サブスクリプション

サブスクリプションの課金パターンを分類し、事例を交えながらご説明します。
itaru hamamoto (至)
2021.10.09
誰でも

私はインターネット上の直接課金でマネタイズできる人を増やしたいと思っています。

この一言だけだとすごく胡散臭くて自分でも引きました。笑

インターネット上のマネタイズ、いわゆる収益化というのは大きく分けると広告と直接課金の 2 種類しかありません。ビジネスモデルが複雑化している業界もありますが、基本はこの 2 種類です。

例えば YouTuber やインスタグラマーが商品紹介をして稼ぐのは「広告」。YouTube のスーパーチャットは投げ銭という名の直接課金。

そして直接課金の中でも私はサブスクリプションが好きで、一応専門です。Netflix とか、スマホの通信料金とかの月額のアレです。

とくに個人やスモールチームがサブスクリプションで自分のファン・オーディエンスから月額で課金してもらうことは、持続的なビジネスを築けるコミュニティが増えることにつながります。

今回はインターネットマネタイズ手法研究と題して、個人・スモールチームが行うサブスクリプションの分類について、事例を交えながらご説明したいと思います。

***

サブスクリプションの優れている点📊

分類について整理する前に、個人やスモールチームがサブスクリプションでオーディエンスから月額課金をしてもらうことが、いかに優れているかを下記にまとめてみます。

  • 安定性
    月額課金は、毎月定額の課金を得るということなので、単品記事を売ったり投げ銭をもらうよりは収入が安定します。
    Clubhouse がクリエイターにとってよいツールになるのか?という議論において、海外だと度々クリエイター収入の安定性を考えるとベストではないのではないか?と話題になります(Clubhouse は投げ銭からテストしているので)。
    たった一日で数百万円入る、みたいなドリームはあまりないですが、安定してサービスを提供できている限りは売上が急激に下がったりすることも少なく、インターネット上のビジネスを主軸に置くクリエイターにとって、最も選ばれやすく長く継続的に行えるビジネスモデルと言えそうです。

  • コンテンツ単価のスケール性
    記事を単品で売ったり寄稿した際に比べ、サブスクリプションはコンテンツ単価をほぼ上限なくスケールできます。
    例えば記事執筆を考えてみましょう。週に 1 本の記事配信だと月に 4, 5 本の記事を出せます。月額 500 円を払ってくれる読み手が 500 人いれば売上は 25 万円。記事 1 本あたりの単価は平均して 5 万 ~ 6.25 万ということになります。課金者が 1,000 人になればこの 2 倍です。
    1 本の記事を納品して、5 万円以上もらえる執筆の仕事はまだあるかもしれませんが、10 万円以上もらえる執筆の仕事はほとんどありません。
    サブスクリプションは多くの人が労働集約的なモデルから脱却することができる可能性を秘めています。

  • 予測可能性
    サブスクリプションは、チャーンレート(解約率)、新規加入率などいくつかの指標を安定させておけば、成長率から来月やその翌月の売上を予測することは難しくありません。
    予測がしやすいということは投資がしやすいということです。投資がしやすいということは打ち手がたくさんあるということです。売上を安定させるためのアイデアや、伸ばすための方法にフォーカスしやすい点も、サブスクリプションの魅力だと思います。

  • 拡張性
    単品売りは分かりやすくコンテンツ販売という側面が強くなってしまいます。しかしサブスクリプションビジネスは、本質的にはサービス業だと私は考えています。コンテンツは月額に含まれる 1 つのサービスでしかありません。
    つまり、サブスクリプションは課金に結びつくプレミアを設けやすいということです。コンテンツだけでなく、課金者に対し限定コミュニティに招待したり、月 1 のウェビナーにご招待したり、イベントの無料チケットを配ったり。
    コンテンツだけではない自由度を持つことができます。例えば、作家であれば次回作のクレジットに月額会員の名前を載せる、なども一つのプレミアになります。

他にもあるよ!って方はぜひ Tweet などで教えてください😌

一方で、月額の単価変更が難しかったり、安定したサービス提供自体がなかなかハードだったりと、サブスクリプションのデメリット(?)もあると思います。

サブスクリプションビジネスの分類😎

さて、ここからはサブスクリプションをどう課金してもらうか?についてのアイデアを記述していきます。サブスクリプションが、コンテンツ業からサービス業への転換・進化をさせていることがわかると思います!

今回、サブスクリプションの分類は以下の 5 種類にしました。分類には無料コンテンツと有料コンテンツの差別化という観点を多分に入れています。

  • 習慣型
  • 付加価値型
  • 寄付型
  • 参加型
  • 商品型

一つ一つ解説していきます。

1. 習慣型

習慣型のサブスクリプションは、無料コンテンツと有料コンテンツに差がなく、配信頻度が違います。

例えば、無料配信を月 1 回、有料会員になれば週 1 回の頻度になりますよ、などです。習慣型の良いところは「期待値調整がしやすい」ことでしょう。無料版は常に有料版のプレビューという立ち位置になります。提供しているサービスの中でも「コンテンツ」に特に自信のある方におすすめしやすい形式です。

2.5 万人以上が有料購読している Ben Thompson 氏の「Stratechery」も習慣型で、無料の「Weekly Article」に加えて週 3 回、合計週 4 回の配信頻度が欲しい方は有料購読してね、という風になっています。ちなみに「Weekly Article」も相当面白く、基本的なクオリティは有料版の「The Daily Update」と大差ありません。無料版に満足した人が有料版に移行します。

theLetter の書き手さんでいえば、化粧品メーカー研究職のなつなつさんが配信している Beauty Science News がこの形式です。無料版は月 1 本、有料版は週 1 本の頻度で届きます。以前なつなつさんにインタビューした公式ニュースレターでは、

基本的には有料記事と無料記事で、クオリティの差をつけないように考えています。無料記事は有料記事のイメージといいますか、「こういう記事を配信しているんだな」と知ってもらうために出しているからです。
なつなつ

とおっしゃっていて、まさにこの部分が習慣型の本質だなと思います。

2. 付加価値型

一方、付加価値型は無料版と有料版と明確にコンテンツの質や形式、読める時期に差をつけていることが特徴です。

例えば、ニュースレターで有名な Benedict Evans 氏の「Benedict's Newsletter」の有料ニュースレターは、独占コラムと詳細な分析を週次で送っています。一方無料版はニュース中心のリンクのキュレーションが中心で、有料ニュースレターへの導線になっています。

Benedict
Benedict's Newsletter

ちなみに Benedict Evans 氏は 7 年以上ニュースレターを更新し続けていて、毎年ずっと読者が増え続けておられるよう↓

他にも漫画アプリの「ピッコマ」も「待てば無料」と広告がよく出てきますが、早く続きを読めること、最新作の公開後すぐに読めること、など読める時期に課金している形式も付加価値型に入ります(というか入れました)。

付加価値型がもっとも直感的な課金のしてもらい方かなと思います。無料版でいかに有料版の魅力について PR できるか?が鍵になります。消費者目線でいえば、お金を払ってもらうまで、どんなものが手に入るのか分かりにくいので。

付加価値型は、無料版と明確に差があるため、課金してもらう理由をつくりやすいというメリットがあります。

3. 寄付型

寄付型は文字通り、寄付のサブスクリプションです。ほとんどのコンテンツが無料で提供されるので、無料会員と有料会員の間に、提供されるサービスの差はほとんどありません。配信者を支援したいという消費者にサブスクリプションで寄付されることでマネタイズしています。

私個人としては、非常に興味を持っているマネタイズ手法です。

寄付型として黒字化を打ち立てたメディアとして、イギリスの老舗メディア The Guardian があります。2018-2019 の決算では、1998年以来同社初の黒字化ということで、当時はかなり注目されていました。

The Guardian は公共性を重視するメディアのため、お金を払っている人しか続きを読めないペイウォールを設けることが理念上できませんでした。月額6.99ドルで広告をなくして気持ちよく読めるなどのリーダーアプリ(無料でも読める)の他に、頻繁に寄付への導線が出てきます。サブスクリプションがデフォルトでおすすめされますが、単発での寄付もできるようです。

theLetter でいえば、金谷さんが運営されている「STEAM NEWS by Ichi」が寄付という形式を取られています。

steam.theletter.jp

メディアの思想が明確であること、意義があるということ、それを支援するという体験自体が価値を持っていること、などが課金される理由なのかなと思います。The Guardian は 36万人以上の人がサブスクリプション課金をしているそう。

4. 参加型

参加型は、コミュニティへのアクセス、意見を言える、個別相談ができる、クレジットに載るなど、参加者が能動的に参加できることをインセンティブにしていることが特徴です。無料版はコンテンツを読めるだけだけど、参加型はコンテンツの制作に参加できるなど。日本でもよく見かけますよね。

作家の Travis Deverell さんは、クリエイターエコノミーの老舗である Patreon で小説を書いています。私が執筆時点で 3,900 人のサブスク課金者がいるようです(年収 1 億近くありそう)。

作品の最新版を、発売の何週間前から読めるか?という部分に複数プランがあり、Gold Rank 以降のプランは参加型となっています。

具体的には、

  • Discord への参加(コミュニティアクセス)
  • Discord の権限が違う(高いプランの方が優遇される or より作品制作に近くなる)

といった感じだそう。他にも Patreon は面白くて、動画のエンドクレジットに支援者の名前を入れたり、ライブで支援者の名前を取り上げて感謝の言葉を伝えたり、コミュニティに一員であることやプロセスを共有することに対して報酬を設けている事例があります。

参加型は、報酬によってプラン分けしやすく、単価を上げやすいことが一つの特徴かなと思います。ただ、あまりやりすぎると新興宗教のような空気感になったり、コンテンツ制作に時間を費やしにくくなったりしそうなので、自分が得意な報酬設定にすることが大事そうですね。

5. 商品型

商品型は、月額を支払っている人に限定動画や限定商材へアクセスできるようにすることに対して課金します。商品が明確であることが強みです。

例えば、企業データベースを持つ Crunchbase は、月額課金すると未上場企業の投資家や資金調達の情報を得られます。プランによって検索結果数やデータの更新タイミング、連絡先情報を入手できるかどうかなどに違いがあります。

同様に、サブスクメディアの The Information もクリエイターエコノミーのデータベースを持っていて、課金すると投資や事業内容の詳細なデータにアクセスできるようです。

商品が更新され続けることと、その情報や商品自体に価値があること、入手が難しいこと、などの特徴のある商材じゃないとサブスクリプションの解約率を低く抑えることが難しいと思います。

課金ポイントの多様化👀

広告モデルが主流だったイメージがありますが、これからはクリエイターエコノミー市場の拡大に伴って、様々な課金パターンが生まれると思います。私が上記でご紹介した分類の他にもたくさんの事例が生まれてきます。また、この分類はどれか一つしか選べないというわけでなく、組み合わせが重要です。

クリエイターの強みはバラバラなので、自分の強みをマネタイズしやすい世の中になっていくのかなと思うと、とても素敵だなと思います。とりあえず大学行って就職!とりあえず正社員最強!みたいな考え方もどんどん崩れてくるのではないでしょうか。

最近、コモディティ化と自由度の兼ね合いなどよく考えます。プラットフォームのようなサービスを運営しているとわかるのですが、機能一つのリリースでクリエイターそれぞれのパフォーマンスが上がったりするのですが、それは同時にクリエイターの画一化を進めてしまいます。果たしてそれはクリエイティビティなのか?

YouTube や TikTok を眺めてるとわかると思うのですが、誰か新しいことをやるとみんながそれを真似します。というか、真似することを推奨するようなアルゴリズムやデザインになっているのです。効果の高い(エンゲージメントや View 数の大きい)と分かっているコンテンツ形式をより多くの人にやってもらう方が、クリエイターにとってもプラットフォームにとっても利があるからです(そして広告主にとっても)。

コモディティ化は競争を招き、クリエイター自身の競合優位性を長期的には下げてしまいます。ここは上手くバランスできるといいなと思います。

***

今回はサブスクリプションの利点や分類を好き勝手まとめてみました。他にもこんなんあるよ!とか、これはxx型かな?みたいな気付きがあれば、ぜひ Tweet なりシェアして教えてください。

P.S. ディズニーシーというところに初めて行きました

おまえたち、最高だぜ〜〜〜〜! by クラッシュ
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