タイムラインアルゴリズムからの脱却とパーソナルメディアの未来

海外テキストメディアでは、タイムラインのような、人々の興味関心からコンテンツをマッチングさせるアルゴリズムから脱却する考え方がトレンドです。とのトレンドについてご紹介できればと思います。
itaru hamamoto (至)
2020.11.09
誰でも

本稿は、BRIDGE にも掲載されている記事です。BRIDGE では記事を 2 分割して配信されました。このニュースレターでは前編後編を分けずに内容を書いていきますね!

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テキストブログサービスや個人のマネタイズについてリサーチしている中で、海外ではタイムラインでのコンテンツマッチングアルゴリズムから脱却し、ファンや読者と直接繋がるトレンドにあることを知りました。

今回はそういったトレンドの渦中にあるサービスについて紹介しつつ、タイムラインアルゴリズムからの脱却と、パーソナルメディアの未来について考察します。

ファンや読者と直接繋がる

EC 業界は Amazon などの巨大なマーケットプレイスがあるにも関わらず、Shopify や BASE など多くのネットショップ立ち上げサービスが成長してきました。

その背景には、SNS で誰もが発信力を持てるようになったこと、商品のコモディティ化の速度が上がり独自のブランドストーリーを持つ必要性が大きくなったことなどがあると思います。

ネット上のテキストメディアの世界においても、ここ 10 年間の Facebook フェイクニュース問題や、広告モデルから直接課金モデルへの転換トレンドを受け、EC 業界と似た変化がグローバルで起きつつあります。

読者とコンテンツのマッチングアルゴリズムに投資する Medium に対し、誰もがメールアドレスを収集でき、読者と直接繋がれるニュースレターサービスの Substack が生まれています。タイムライン上でのコンテンツマッチングアルゴリズムに依存せず、自分だけのファンや読者を集め、独自のコミュニティを構築していけるサービスが次々に成長しています。

そういったサービスは、広告モデルのサービスと比べ、ニッチな領域と相性が良く、個性や情熱をどんどんマネタイズしていける社会になると、Substack に投資している Andreessen Horowiz の The Passion Economy and the Future of Work でも伝えています。

タイムライン以外の顧客接点をつくる

では、どういったサービスがグローバルで生まれてきているのでしょうか?テキストコンテンツにおけるタイムライン以外での顧客接点としては、メール(ニュースレター)、チャットサービス、SMS があります。

それぞれのサービスについてご説明していきます。

メール(ニュースレター)

英語圏を中心に、多くのニュースレターメディアが生まれています。

メディア各社がスマホシフトの際に、広告単価を決めるプラットフォームという立場を取れず、SNS やニュースキュレーションアプリを通してしか顧客接点を取れなくなった事を背景に、顧客である読者と直接の関係を結ぶ手段としてニュースレターが流行してきました。

アメリカではインターネットメディアで最も栄誉ある Online Journalism Award にも Excellence in Newsletters というニュースレター部門が新設され、ファイナリストには The Washington Post や The New York Times などの大手メディアの他にも、ニュースレターメディアとして急成長中の Axios、Substack で運営されている Popular Information が選ばれています。

https://awards.journalists.org/winners/2020/
https://awards.journalists.org/winners/2020/

そういった流れからも、個人がニュースレターメディアを立ち上げられるサービスの流行が分かります。

どんなサービスがあるか、ご紹介していきます。

TinyLetter by Mailchimp

tinyletter.com
tinyletter.com

Substack が生まれたのは 2017 年ですが、ニュースレターをシンプルな UI で執筆・発信できるサービスは他にも多くあり、2010 年からすでに始まっていました。個人向けのニュースレターサービスの TinyLetter です。

ブログサービスの CMS を利用するように、ニュースレターを簡単な UI で発信できるサービスは当時斬新で、立ち上げ約 1 年後に老舗のメールマーケティングツール Mailchimp に買収されました。

TinyLetter は 2015 年時点で 14 万以上のアカウントがあり、合計 1,400 万人の購読者にニュースレターを送っていました。

しかしながら、TinyLetter は Mailchimp の入り口的な立ち位置のサービスとなり、5,000 人以上の購読者が集まれば Mailchimp への移行を促され、直接課金の機能が実装されることもなく、ユーザーによる Medium や Substack への移行が進んできたようです。

Ghost

ghost.org
ghost.org

2013 年にクラウドファンディング Kickstarter でのキャンペーンで始まった非営利団体によるオープンソースのニュースレターサービス Ghost は、カスタムドメインやページの見た目のカスタムができたりと、ブログツールの WordPress のような自由度があります。

そして、有料のニュースレターを発信することも可能です。

購読者数の規模に応じてプランがあり、月額の利用料金は $36 ~ $249 となっています。累計 250 万以上のインストールがあります。

Revue

www.getrevue.co
www.getrevue.co

2015 年に設立され、複数人での編集や分析に強い Revue は、Substack の生まれる前の 2016 年時点で 2 万人以上の利用者がいました。

特徴としては企業アカウントが比較的多い事が挙げられ、Vox Media の The Interface や、VentureBeat の Daily Roundtrip などは Revue 経由で配信されています。

www.getrevue.co
www.getrevue.co

Ghost と同じく有料のニュースレターを発行可能です。

ビジネスモデルは、購読者 50 人までは無料で、以降は購読者数に応じて月額が上がっていくサブスクリプションモデルです。

Buttondown

buttondown.email
buttondown.email

2017 年に生まれた Buttondown は、1 人の個人ディベロッパーによって開発されたサービスです。

Substack よりも分析ツールや各種 API などのツールが拡充していますが、Web 記事のアーカイブページの UI などは他サービスに劣る印象を受けます。

有料のニュースレターの売上に対して手数料はなく、購読者 1,000 人ごとに月額 $5 がかかります。

ちなみに Revue や Buttondown は、Substack のピッチ資料の競合ページにも記載されています。

https://www.docdroid.net/nRjIekI/substack-pptx
https://www.docdroid.net/nRjIekI/substack-pptx

Substack

substack.com
substack.com

Substack は Y Combinator を卒業した後、Andressen Horowiz から資金調達した、勢いのあるサービスです。

Axios の記事によると、Substack で運営される有料ニュースレター全体の有料購読者は 25 万人以上で、上位 10 名のライター達の年間売上は 700 万ドルにもなるそうです。

ビジネスモデルは上記で紹介したサービスと異なり、ライターの月額売上の 10% を手数料とするレベニューシェアモデルとなっています。

Substack は日本国内でも度々ニュースになっているため、ここでは参考記事を載せておきます。

チャットサービス

ファンや読者と直接繋がれるチャネルは、メール(ニュースレター)以外にも存在します。

ブラジル中心に展開している ChatPay は、WhatsApp や Telegram で作成されたチャットグループを収益化できるサービスです。Y Combinator の 2020 年夏バッチを卒業したスタートアップでもあります。

chatpay.com.br
chatpay.com.br

ChatPay で作成されたグループは、フィットネスコーチやギターの講習などジャンルは様々で、個人のスキルを収益化することができます。

WhatsApp や Telegram のグループ作成や決済は全て ChatPay 上で行われるため、会員の管理が自動化され、ChatPay を利用するインストラクターは集客や運営に集中することができます。

トップのインストラクターは年間 30 万ドル以上の売上を持ち、ChatPay は月額売上の 10.9% を手数料とするレベニューシェアのビジネスモデルとなっています。

ChatPay を利用するインストラクターは、新たなインストラクターを紹介するとそのインストラクターの売上の 5% を収益にできる紹介プログラムを利用できます。

また、各インストラクターは自身のグループメンバーにアフィリエイトプログラムに参加してもらうことも可能です。

日本国内だと Facebook グループ中心で運営されるオンラインサロンサービスと少し似ているかもしれません。(しかしながら国内のオンラインサロンサービスはサロン側の名簿と Facebook グループの名簿を運営者が突合する必要がある事が多い)

SMS

さらに、電話番号でメッセージが送信できる SMS もファンと直接繋がれるチャネルとして注目されています。

2018 年頃から本格スタートした Community は、アーティストなどのセレブを中心に使われている SMS を介したファンとのコミュニティツールで、現在アメリカとカナダでのみ利用が可能です。

community.com
community.com

Community にリーダーとして参加すると、10 桁の電話番号を与えられ、ファンがそこにテキストメッセージをすると Community にオプトインする仕組みとなっている。

Community アプリや Web 管理画面にて、電話番号からオプトインしてきたファンにメッセージを送ることが可能で、FastCompany によれば 500 人以上の有名人が数百万人のファンを Community に抱えているそうです。

SMS はニュースレターと異なり、音声メッセージや動画も送れるものの、テキストは 400 字以内という制限もあるため、コンテンツというよりコミュニケーションという側面が強そうです。

ちなみに、顧客に対して SMS を利用するというアイデアは、B 向けの CRM サービスとして SuperPhone というサービスでも試されてきました。

Community の利用者一覧を見ると、オバマ元大統領や、ポールマッカートニーなどの超有名人から、Lauv や Marshmello など大人気アーティストも多数登録している事が分かる。

タイムラインへのアンチテーゼ

Community や Substack はとくに、ソーシャルメディアへのアンチテーゼとしてサービスを打ち出しています。

例えば、Community の Why Community? ページでは、アルゴリズムにファンとの関係を阻害されるデメリットや、広告のためのパーソナルデータを収集しない意向について書かれています。

しかしながら、上記で紹介したどのサービスも、Google 検索や口コミ以外でファンや読者を収集する機能を備えているわけではなく、集客においては SNS に大きく依存しています。そもそも EC 業界で起きたネットショップの成長や D2C トレンドも SNS の発達なしにはあり得ず、テキストメディアの世界でもそれは同様です。

現在のパーソナルメディアのトレンドは、タイムラインを採用する SNS のコンテンツマッチングアルゴリズムへのアンチテーゼとして生まれていますが、SNS での情報の民主化がなければそもそも成り立たないビジネスモデルであるということに注意が必要です。

誰もがパーソナルメディアを立ち上げられる

本記事では、ファンや読者と直接繋がれるパーソナルメディア構築のトレンドとそのサービスについてご紹介してきました。

20 年以上に渡ってインターネットサービスがどんどん個人をエンパワメントしてきた結果、今や誰もが直接課金モデルを採用したパーソナルメディアを持つことができます。

日本国内では、オンラインサロンサービスや独自アプリを持つファンクラブ系サービスがある一方、まだまだ上記でご説明してきたトレンドに入るサービスは出てきていません。

その中で我々は、ニュースレター × テキストメディアの領域で theLetter を展開し、挑戦していきます。

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今回、気合を入れて書いたため長くなってしまいました。メディアの未来、個人のマネタイズ、ニュースレター、ジャーナリズム、パッションエコノミーなどにご興味ある方、ぜひ私とお話しましょう。お気軽に DM くださいね!

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実は 7 ~ 10 月の間、アクセラレータプログラム「Open Network Lab」に 21 期として参加させていただきました。

アクセラレータプログラムとは、創業間もないスタートアップの最初の成長を、資金面や事業に関わる人材紹介など、あらゆる側面からサポートしてくれるもので、シリコンバレーだと Airbnb や Dropbox を生み出した Y Combinator が有名です。

次回は参加した振り返りを書こうかなと考えています。それではまた!

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